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2012.01.02(Mon)

「あなたじゃなくなった日」

まだ一線を越えてません。



「君は誰?」


あの言葉を聞いたとき、あたしは最初は嘘だと思った。



――一昨日の夜・・・


21時頃、撩は飲みに行ってくると上機嫌にアパートを出て行った。

あたしは、いつものことかと思って何も気にしてなかったけど・・・
今考えてみれば、あれは心配させまいと嘘をついて裏の仕事へ行っていたのね。


あたしはそんなこととは知らず、翌朝になっても帰ってこない撩に腹を立てていた。


「撩ったら飲みに行くって言ってもう朝じゃないの!」


朝からイライラしていると、家の電話が鳴り響いた。


「はい、もしもし冴羽商事です」

「あ、香さん!」

「あれ、美樹さん?」

「大変よ!!」


美樹の慌てぶりに驚いて事情を聞いてみると・・・


「なんですって!?撩が倒れてた!?」


今朝方、海坊主が店を開けようとドアの方へ行くと、人の影が目に入り
ドアを開けよく見たら撩が血まみれで倒れていた。

海坊主と美樹は急いでカズエに連絡を取り、教授宅に連れていった。


あたしは「まさか、そんなあり得ない」って思って教授の所へ急いで向かった。

そして、ベッドに横たわり呼吸器をした撩の姿を目にした。


あの時・・・凄いショックだった。
撩はこんなことになるはずがないって頭のどこかで思っていたから。



「大丈夫かい?」

両手で口を押さえ、涙を堪える香に心配そうに声を掛けるミック。


「ミック・・・なんでこんなことに・・・?」

「・・・・・」

申し訳なさそうな表情で俯くミックに香は問いつめると重い口を開いた。

ミックの話によると、昨夜の仕事は実はミックと行くはずだったもので
二人で作戦も練っていたそうだ。

だが、ミックは事もあろうに遅れて行き、時間厳守の仕事だったため
撩は先に出発していた。
それで、後を追いかけたミックだったが撩の足取りが掴めず今回の仕事を
諦めて帰ってきたらカズエから連絡を貰って今に至るわけだ。


「撩は飲みに行くって言ってたのあれ嘘だったの?」

「ああ、それは口実だろう」

「凄い上機嫌で出て行ったからてっきりそうだとばかり・・・」

「あいつなりにキミに心配掛けさせたくなかったんだろう」

「そんな・・・」



「ん・・・・う・・ん・・・」

「撩!?」


撩が目を覚ました。
香の声に皆ベッドに寄ってきた。
だが、意識を取り戻した彼の瞳はどこか違う物のようだった。

心配そうに覗き込む香だが・・・

「撩・・・?」

「君は誰?」

「え?何言ってるの撩。あんた冗談はよしなさいよ!」

「えっと、そう言われても・・・俺今初めて会ったんですが・・・」

「え・・・・?」


撩の聞き慣れない言葉に後ずさりをした香にミックが駆け寄り言葉を書けた。


「カオリ・・・撩は記憶が・・・・」

「そんな・・・!!」


堪えていた涙が出そうになり病室から出ると廊下で泣き崩れてしまった。

そんな・・・!


心配して駆けつけた美樹が香にハンカチを渡し背中をさすってあげていた。

香もだいぶ落ち着きを見せ始めた頃、カズエが病室から出てきた。


「香さん」

「あ、カズエさん・・・撩の様子はどう?」

「えっと、今の状態は人格も何をしてきたのかさえも忘れてしまってるようだわ」

「それじゃあ・・・銃の知識や今まで積み重ねてきた彼のスイーパーとしての腕は?」

「おそらく・・・無いにも等しいんじゃないかしら・・・」

「それじゃあ・・・」


撩は色々な組織から目を付けられてるのは事実。
これが知れ渡ったら彼の命が・・・

なんとかして守ってあげないといけないわ。
あたしがシッカリしないと!


「家に連れ帰ってなんとか記憶が戻らないか頑張ってみます!」

「ええ、でも・・・しばらくここに居た方が・・・」

「ううん、撩も住み慣れた場所に戻ったらパッと戻るかもしれないし」

「わかったわ。じゃあ、何かあったらすぐに連絡ちょうだいね」

「ありがとうカズエさん」


それから、あたしは撩を連れ我が家に戻っていった。

いつもの撩に戻ってくれるかもしれないって期待感を抱いて・・・


「ここが、俺が住んでいた所なんですか?」

「え、ええ・・そうよ」

「それで、君は俺とどういう関係だったんです?」

「え、えええっと・・・普通の同居人よっ」

「同居人??」

「そそ!シェアのようなものよ!あたしが身の回りの世話をする代わりに
あなたが仕事をしてくるっていう感じよ!」

「それって夫婦じゃなく?」

「ち、違うわよ!」

「そ、そうですか」


アパートに戻ったものの、いつもと全然違う性格と話し方に戸惑う香。
撩もここが本当に自分が住んでいた所なのか信じられず戸惑っていた。

香はとりあえず撩を自室へ連れて行き、ベッドに横たわらせ休ませることにした。


そして、夕方になり食事の準備をキッチンでしていると「手伝いましょうか?」と
顔を出してきた。

「え?いいわよっ。もうすぐできるし座って待ってて~」

「あ、はい。何から何まですいません」

「あはは、何言ってるのよ。ここはあなたの家なんだからね?」


空笑いしながら香は食事をダイニングへ運ぶ。
撩の変わりぶりにかなりのショックなのだが、それを見せてしまっては
撩自身が不安になってしまうだろうと思い、なんとか耐えていた。


「わっ、香さんの作った料理美味しいっすね!」

「そ、そう?良かった~」


普段美味しいなんて言ってくれること無いのに、目の前の別人の撩は
普通に「美味しい」と言ってくれた・・
食べ方も普通の男性の食べ方で行儀良く綺麗に食べている。

撩があの飛行機事故に巻き込まれなければ、こうやって普通に育ったのかな。
と思ってしまう・・・


食事を済ませた撩はリビングで寛いでいた。
香は自室へ行きベッドに倒れ込みいつの間にか寝入ってしまっていた。


どれくらい寝てしまっていたのだろうか、気が付けば夜9時を回ろうとしていた。
それに気付いて飛び起きた香は自分の身体に布団が掛けられていることに気付き
ここに撩が顔を出したことにビックリして見渡すが居るはずがない。

(ここへ顔を出したって事は・・・トラップを潜り抜けてきたってことよね?
でももしかしたら、傷だらけになってるかもしれない!)

急いでリビングへ行ってみたがそこには撩の姿がなかった。
撩の自室へも行ったが居ない・・・


「あれ?撩どこ行ったんだろう・・・」


ハッと思い出した場所へ駆け足で向かうと、そのドアがちょっと開いていた。
やはりここにも足を踏み入れてしまったか・・・と思い中を覗いてみると・・・

やはり呆然と突っ立っている撩が目に入った。
その姿はトラップを潜り抜けたはずなのに傷一つ見当たらない。

「やっぱり、ここにいたのね」

「あ・・・のここ一体何ですか?」

「えっと・・・射撃場よ・・・」

「なんで地下にこんな場所があるんですか?
俺は一体何者なんですか!?」


撩の言葉に戸惑っていると、奧から物音がし声が聞こえていた。


「あら~香さんに撩じゃない。二人してどうしたの?」

「あ、麗香さん・・・」

「麗香・・・さん?」

「ちょ、ちょっと?撩ったらなんか変よ?」


訳が分かっていない麗香にこれまでの事を説明すると青ざめ「ええ!?」
と大きな声を出して驚いていた。


「撩が記憶喪失って・・・話し方も違うって事は今までのこと全部忘れてるの?」

「うん、そういうことになるわね」

「うっそー!じゃぁ、私とのこと忘れちゃったのー!?」

「え?俺、あなたと何かあったんですか??」

「うんうん!そうよ!私達付き合ってたんだから!」

「ちょ!麗香さん!そんなことないでしょ!
嘘を吹き込まないで!!」

「ええーいいじゃな~い?この際、付き合ってるって事でもさ~」

「もう!」

「違うんですか?」

「そんなわけないでしょ!」

勘違いしてしまうので、撩にはちゃんと否定をしておいた香。
顔を真っ赤にして否定する香を見た撩は不思議に思っていた。


射撃場のことはお座なりになり、記憶喪失になってから1日目は終了した。



――翌朝・・・


少し寝坊してしまった香。昨日の疲れが残っていたのだろう。
急いでキッチンへ行くと撩がせっせと朝食の準備をしていた。


「あ、おはようございます!」

「お、おはよう・・・」

「いや~料理って出来るのか自信無かったんですが、やってみれば
出来るもんなんすね!」


(前の記憶が身体に染みついてるからなのかしら?)


そう思いつつ、香は出来上がった朝食をダイニングへ運び、二人向かい合いながら食べ始めた。
しばらく静かに食べていると何か視線に気付いた香。
ふと見上げると撩が優しい目つきで自分を見ていた。


「どうかしたかしら?」

「え、いや・・・香さんって綺麗だなって・・」

「え!?な、何急に」

「ほら、そうやって真っ赤になるところも可愛いし」


普段の撩だったら絶対に言ってこない言葉を連発されて困惑する香。
いつもと違うんだと思い聞かせてなんとか保っているが、やはり香にとって好きな人。
好きな人に「綺麗」「可愛い」なんて言われてしまっては恥ずかしくて仕方ない。

顔を真っ赤にモジモジしている香を見る撩の表情は穏やかだった。


(まったく・・・普段のあいつだったら、あたしのこと男扱いしかしないのに
今の撩はあたしのことを普通に扱ってくれる・・・)


いつもと違う撩に気持ちが傾いてしまいそうになる自分に戸惑いを隠せないで居た。


朝食を食べ終わり、香は普段通り依頼がないか伝言板がある新宿駅へ出掛けようとしていた。
だが、ふと思う。依頼があったとしても今の撩ではまともに受けられないのではと・・・

朝食を食べ終わりリビングでテレビを見ていた撩を横目で見つめる。

(見慣れた物を見たら、もしかしたら思い出すかもしれないわね)


早速、撩に声を掛けると新宿の街へと繰り出した。


物珍しそうに繁華街を見渡す撩。
まるで田舎の子が都会に出てきたときの反応のようだ。
記憶を失ったせいで見るもの全てが目新しく写る。

ちょっと恥ずかしくなった香は撩の腕を引っ張って伝言板まで向かった。


そして、伝言板には・・・

“XYZ”の文字が書かれていた。

(あちゃー・・・こんな時に限って依頼が舞い込んでくるんだからぁ・・・)


「これが何なんですか?」

「えっと・・・この伝言板にXYZと書かれてると、あたし達の出番ってことなの」

「出番?XYZってなんです?」

「XYZ・・・後がないって意味であたし達便利屋の合い言葉?のような物よ。
この下の書かれてる所に連絡をして依頼を受けるの」

「依頼?難しい事ですかね?」

「うーん、その時によって違うけど・・・今回はどうかしらねぇ・・・」


(字体が男性っぽいけど・・・面倒なのじゃなければいいわね)


香は早速その依頼主に電話をして依頼内容の確認を簡単に取った。

するとどうにか今回は香でも出来るような軽い仕事のようだった。
ホッとした香だが、とりあえず今回の仕事をサッサと片付けてしまおうと
早速依頼主の所へ行くことにした。

待ち合わせ場所は、今までとは違う公園であった。

その公園のベンチで座って待っていると黒いロングコートを着た長身の男が現れた。
サングラスを掛けていて顔がよく分からない。

香は立ち上がりその男に近づくと、急に首根っこを掴み激しく締め付けてきた!


「うああぁぁ!!!」


香のうねり声に撩は慌てて男に飛びかかるが跳ね返されてしまう。
超人な肉体の持ち主の撩でも人格や経験を忘れてしまっているせいで
本領が発揮できない。そんな自分に頭を抱え立ち尽くしていると・・・


「カオリ!!」


ミックが助けに入ってきた!

男に突進し、首を締め付ける力が緩むと香はその好きにすり抜け逃げ出した!
ミックは男を捕まえようと体勢を整えようと立ち上がり、男がいた方向を見ると
もう向こうの方まで走って逃げ去っていた。


「くそっ・・・」

「な、なんなんですか・・・?」

「リョ、リョウ!!お前が居ながら何なんだこの様は!!」

ミックは撩の首根っこを掴み罵る。

「そんなこと言われても・・・!!」

いつもと違う撩にハッと我に返るミックは「すまない」と言って撩から離れた。
そして倒れ込む香に手を差し出し起きあがらせグッと抱き寄せた。
その光景を切ない表情で見つめる撩。


「ミック・・・・ありがと助かったわ・・・」

「いや、いいんだ。君たちを監視しててよかったよ」

「え?ずっとあたし達の事つけてたの?」

「ああ、すまない。だが気になることがあってね・・・」

「気になること?」

「ああ・・・それが・・・」

ミックが言いかけたところで撩が唸り声と共に倒れ込んでしまった。
ビックリした香が撩に駆け寄ってみると、撩は気を失っていた。

「りょ、撩!?」


倒れた撩をミックは担ぎ上げると教授の所へ急いで運んだ。



・・・かおり


・・・・香?


「香・・?」


ハッと飛び起きた撩。しばらく呆然として周りを見渡すとそこは病室だった。
外は暗く、もう夜だということがわかった。
ふと自分の傍らに目をやると香が椅子に座りながらベッドに伏せて眠っていた。


「香さん・・・俺の事ずっと見ていてくれてたんだね・・」


(なんだろう・・・凄く切ない・・・俺、香さんのこと・・)

香さんのこと・・・



香の頭を撫でながら優しい目つきで見つめている。
それに気付いて目を覚ました香は、撩に撫でられていることに気付き赤面してしまう。

「あ・・・りょ、撩・・・目を覚ましたのね」

撫でられていることに恥ずかしくなった香は起きあがると撩の頭を触り

「頭痛くてしんどいなら、まだ寝てるといいわよ?」

「あ、今は大丈夫です・・」

少し照れている撩に香はいつもの調子を崩しこちらも恥ずかしくなってしまう。

「あは・・・あははは。なら、いいのよ、うん・・・」

「か、香さん?」

「な、なに?」



香の腕を掴みグッと引き寄せ抱きしめた。


「俺・・・香さんのことが・・・」

「あ、え?ちょっ・・・ちょっと?」


いつもとは違う撩だが力は相変わらず強い。香は抜け出せずにもがく。

「香さん・・・俺・・この気持ち・・」

香の耳元で囁くと次の瞬間唇を塞いでいた。

「んっ・・・んん!!」

目を大きくして驚き赤面する香は抜け出そうとハンマーを出そうと思考を働かせたが・・・
目の前の撩はいつもの撩ではない、もしこのハンマーでまた気を失ってしまったらと
思い召喚しかかったハンマーは消えて無くなった。(←どんな術師よw/天の声)


数分触れるだけのキスをすると、抱き寄せたまま佇む。

香にとって今までこんなに近くに撩を感じたことがなかった。

撩の吐息、撩の鼓動、撩の匂い・・・

何もかもが初めてで、そして初めて味わった好きな人との初キス。
だけど、それは撩であって撩じゃない人からのキス。
嬉しいようで複雑な気持ちだった。


トクン・・・トクン・・・トクン・・・


心地よい鼓動にいつの間に寝入ってしまった香。
撩もそのまま一緒に寝てしまっていた。


次に撩が気付いたとき、銃声が鳴り響き自分はベッドの下に落ちていた。
急いで起きあがろうとすると、隣で銃を構えるミックに止められた。

「い、一体何があったんですか!?」

混乱する撩にミックが一言。

「香が連れて行かれたんだ!!」

「!?」

ミックはこうなった経緯を軽く話した。

撩と香が寝入ったあと侵入者が現れ、それに気付いた香が侵入者に対して抵抗。
暴れる香を連れ去ってしまった。

「その後、もう一人の侵入者がお前も連れていこうとしたんで、オレが飛び込んで
お前をベッドから引きずり落として、ここで応戦してたんだ」

その後、敵はミックの加戦で諦めたのか立ち去っていった。

ミックは立ち上がり博士やかずえの様子を見に行き無事だと分かると
すぐに撩の元へ戻ってきた。

「か、香さんが・・・俺のせいですよね・・・」

撩は呆然と立ち尽くす。

「恐らく・・・そうだな」


香が自分のせいで連れ去られてしまった事に苛立ち、頭に血が上る。
それと同時にドクンと一瞬映像が浮かぶ。

「か、おり?」

「どうした?お前何か思い出したのか?」

「え、あ・・・いや、急に香さんの顔が頭に思い浮かんで・・・」

「ふ・・・お前、記憶を無くしててもカオリのことが大切なんだな」

「大切?」

「ああ、記憶を失う前のお前もカオリを大切に守っていた」

そう言ってミックは懐から大事そうに何かを取りだし撩に差し出した。

「これは・・・銃?」

「ああ、お前愛用のパイソンだ。
カオリに預かってくれって言われて、ずっとオレが持っていた」

「そうだったんですか・・・」

パイソンをジッと見つめていると、またドクンと頭に血が上り映像が浮かぶ。

『撩!』

それは、満面の笑みで自分を迎えてくれる香の姿。
ハッと我に返る。

(あれは・・・今の自分に向けての笑顔じゃない・・・)

ずっと痛み続ける頭を堪え険しい顔つきにミックが心配して声を掛けるが
よろつきながら立ち上がる撩。

「ミックさん・・・俺、助けに行きたいです香さんのこと・・・」

「撩・・・?そんな体で連れていくわけには・・・」

「行きたいんです!行って確かめたい!本当の自分を!」

「お前・・・」

ミックは撩の気迫に押され仕方なく連れていくことにした。

だが一応銃の使い方を伝授・・・といっても意外と撩の体は覚えているようで
基本をすんなりと出来ていた。

この事に驚いていたのは本人。

「まさか自分に出来るなんて思ってもみなかった・・・
あ、そういえば前に香さんの部屋へ行くとき俺なんか真っ直ぐ歩けなくて
不思議だったんですけど・・・それも記憶と関係あるんでしょうか?」

「真っ直ぐ歩けない・・・?なんか変な罠に引っ掛かったりしたか?」

「いえ、何も起きなかったですよ」

(それって・・・無傷でカオリの罠を潜り抜けたってことだよな。
記憶を無くす前のアイツは、カオリのトラップにワザとハマってたってわけか・・?
ま、まぁ・・・あれだけの技量を持ってるリョウが何故引っ掛かるのか疑問ではあったが)

「記憶を無くすと本来隠していた部分が浮き彫りになるのかもしれないな」

「え?」

「いや、こっちの話だ・・・」


ミックと撩は車に乗り込み、香の服に仕掛けられた発信器が放つ微量な電波を頼りに
居場所を特定しその場所へ急いで向かっていた。

到着すると、そこは化学工場の施設内にある建物だった。
建物付近にはやはり見張り役が数人拳銃を持って待機している。
ミックは気付かれないように物陰に隠れ様子を見る。

すると、どこからか女性の声が聞こえてきた。

「ミック、来たわね」

暗闇の中から姿を現したのは冴子だった。
追っている事件で今回の撩の事と香をさらった組織が関係していると見て
冴子はミックと連携して動いていたのだ。

「あら、撩を連れてきたのね」

「ああ・・・来たいって言うんでね」

「まぁ、いいわ。それより、香さんをさらった奴らがこの奧にいるわ。
早く助け出さないと安否が心配だわ・・・」

「香さんがこの奧にいるんですね!?」

興奮する撩を押さえつけるミック。

「ああ、だがお前は待っていてくれ。
基本を体が覚えているからといっても所詮実践が未経験状態だ。
そんな奴を連れて行くわけにはいかない」

「で、でも・・・!」

「そうよ。お願いだから、ここで待ってて」

止められ項垂れる撩を余所に2人は建物前にいる見張り達に気付かれぬように
銃を構えつつ、物陰に隠れ隣の建物へ忍び込んでいった。

停めた車の影からその光景を見ていた撩であった・・・




「・・・・・・香」

(撩?来てくれたの?)

「何処に居るんだ?」

(え・・・あたしは、ここよ!って声が出ない!?)

「かおり!!」


・・・・!!!

(ゆ、夢・・・?)

「ん・・・んんん・・・」

(あ、あれ?声でない?)

状況を把握するために、混乱する頭が落ち着くまで一生懸命深呼吸をした。
すると、香が今いる場所はどこかの建物の一室で自分は後ろで両手首を縛られ
口はガムテープで塞がれ声を出せないで居ることに気付く。

(こんなんじゃ、身動き取れない・・・)

連れ去られるときにお腹に一撃咥えられ今でもズキズキ痛む。

(くっそー!レディになんてことすんのよ!痛いったらありゃしない・・・!)

苛ついてもがいていると、遠くの方から銃声が聞こえてきた。


ドゴーーン!!


音からして無駄のない動きをしているように聞こえる。
その音にビクンと体を震わせて驚く香。
それはどう聞いても撩のパイソンの銃声。

(そんな・・・まさか・・・記憶が戻ったの?)

不思議に思っていると、部屋のドア前の見張りが倒れ込む音が聞こえた。

静まりかえる・・・


「香・・・さん?」

(!?)

「撩です・・・まさか自分が銃を扱えるなんて思っても見なくて・・・
というか、何故か体が自然と動くんです。あなたを思うと勝手に・・・!」

(撩?記憶まだ戻ってないのに、こんな危険なところにまで!)

香は自分が居ることを示すためにドアの内側からドンドンと体を打ち付ける。

「今開けます!どいておいてください!」

撩は銃でドアノブ付近を狙い見事にロックを解除した。
そしてドアを蹴り破り、部屋の端に立っていた香を発見した。

「香さん!」

口のガムテープを外し両腕を縛っていたロープを外すと
すぐに抱き寄せる。

「無事で良かった・・・」

そう言うと抱きしめる力がこもる。

「りょ、撩・・・」

(こんなに抱きしめて貰えるの初めてだから正直複雑だよ・・・)

香は潤ませた瞳で撩を見上げると撩もジッと香を見つめ返す。

(あ・・・そんなに見つめられたら恥ずかしいよ・・・!)

香は思わず目を逸らす。
すると撩は香の頬に手を添えて顔を近づける。

(ああ・・・だめ・・・)


触れるか触れないか・・・その時だった。


「そこまでだ、撩」

部屋の入り口で銃を構える男。
照準は香を示している。

撩は咄嗟に香を守る体勢になる。

すると、男は迷うこともなく撩に向かって銃弾を放った。

「やめて!!!」

「香さん!?」

香は撩の目の前に立ちはだかり銃弾をその身に受けた。

「う、ああああぁぁ!!」

その衝撃で撩にもたれ掛かった。
目の前で起きた惨事に撩の頭は血が上り激しく脈を打ち始めた。

ドクン・・・ドクン・・・ドクン!!

「うあ・・・うあああああ!!!」

頭を抱えるその姿に男はたじろぐ。
だが、それは一瞬で男はすぐさま撩に向かって銃弾を打ち付けた。

片手で頭を抱えながら、撩は素早く銃弾を避けパイソンで男の足を狙った。


「これは、香をこんな目に遭わせた罰だ」

(・・・撩?)

出血のため、薄れゆく意識の中で自分を呼び捨てにした撩に心地よく思う香。

「香!?シッカリしろよ!」

撩の呼び掛けに応答しなくなった香。気を失ったようだ。

「くそっ!!」

香を抱きかかえ。
もがく男にもう一撃喰らわすと、もの凄い形相で睨み付け部屋を後にした。

撩は香を抱え施設内を走り抜けた。
その途中で、ミックや冴子と出くわした。

「撩!あなた待っててって言ったはずでしょ!どうしてここに!?」

「そうだ!記憶がないことが知られたらお前は・・・!!」

「ふっ、俺は元どおりさ。こいつのおかげでな・・・」

抱きかかえる香を見ながら悲しげに言う。

「香さん!?」

香の脇腹の出血を抑えるために自分の手を当てて押さえ付けている撩。
この状況が危険なことが即分かると、ミックは追いかけてくる敵から2人を
守るために援護に徹し始めた。

「リョウ!カオリを頼んだぞ!」

「おう!」

「もうすぐ警察の援護が到着するわ!包囲網を張って一網打尽するわよ!」

ミックと冴子の援護でなんとか切り抜けた撩は、停めてあった車へ乗り込み
博士の家まで急いで走らせた。


その後、香は急所を外れていることが分かり、一命を取り留めた。

病室に横たわる香。
だいぶ薬が効いてきたのか痛みで苦しんでいた香の表情が和らいでいた。


冴子からの情報によると、俺が受けた依頼はどうやら罠だったようだ。
俺を恨む組織のボスが誘き出すために嘘の依頼を流したそうだ。
俺とミックはまんまとその罠にハマっちまった。

あの日、ミックが遅れた理由も分かった。
俺を一人現場へ向かわせるための罠を奴らは仕掛けていたせいで遅れたんだ。
簡単なことさ。車全てに爆破装置を仕掛けていた。
取り外すために時間を取られ、ミックは時間通りに来られなかった。

指定されたセスナ機に乗せられた俺は情けないことにあまりの怖さで震えて
危険感知能力が薄れていた。
首の後ろから注射器で鎮静剤を打たれてしまった。

その後は俺も覚えていない・・・が恐らくセスナ機から突き落とされたんだろう。
さすがは強運の俺は木々が密集する場所に落ちて何とか一命は取り留めていた。
その代わりに脳に衝撃を受け記憶を失ったそうだ。

(そのせいで、香を苦しめてしまった・・・
俺が狙われているせいで・・・)

ベッドの傍にある丸椅子に座って俯き加減で考え込む撩。


「・・・撩?」

「ん?」

香が目を覚ました。

「どうしたの・・・らしくないよ。暗い顔して」

「・・・すまなかったな。俺が記憶を無くしたばっかりに・・・」

「ふふ、いつもの撩だ」

「・・・香?」

「良かった・・・いつもの撩に戻って・・・一時はどうなるかと思った」

撩はその言葉に香の髪に触れて優しく撫でる。
頬を赤らめて布団からちょこんと顔を出す香。

「はは、まさか記憶がない俺に惚れちゃったか?」

「ま、まさか~」

「満更でも無さそうだな~。でも残念!いつもの俺にもどっちまったからな!」

しばし、いつものように笑顔が溢れる。

「ね、撩は記憶がなかったときの記憶って覚えてるの?」

「ん~・・・うっすらとかな?でも覚えてないに等しいな」

「そっか・・・」

「どうした?」

「ううん・・・なんでもない」


(すまん、香)


俺、全部覚えてる。

あの時、お前に触れようとしたことも・・・

でも、俺はあの時の俺のように素直にお前に触れられない。


いつか・・・

いつか・・・訪れるであろう日の為に、俺は触れてはいけないんだ。


再び、眠りに着いた香を切なげな瞳で見つめていた。

いつか・・・



【Fin】


◆あとがき◆
新年初作品!
正月用に書いていた物です。どうでしたか?
最後は切なく終わったー! 。・゚・(ノ∀`)・゚・。

今年もドラマチックな物語を書いて行けたらと思ってます~!
ということで、今年も宜しくお願いします<(_ _)>

2012年新年初作品でした。

あ、拍手お返事返せなくてスイマセン。・゚・(ノд`)・゚・。
でも、ちゃんと読んでます!!申し訳ないですがお返事を返す時間が無いので
返せるときが来たら、個人個人ではなくまとめて言葉を贈りたいと思ってます。
本当に申し訳御座いませんです<(_ _)>

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テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学

02:38  |  ◆CH小説(原作設定)◆  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

ふたたび、感想です。

的の罠にはまり、けがした為、今までの事の記憶を全部失ったりょう・・・
香の事も忘れ、しゃべり方も、態度も全然かわってしまった。
記憶をなくしたから、仕方が無いにしても、
丁寧な言葉使いなりょうって・・・なんか変!
でも・・香に対しては、記憶が無くても魅かれちゃうんだな~。
まさに一目惚れ状態だね♥。

しかし・・・記憶をなくしてるのに、銃の扱いは忘れないなんて・・・
おまけに、香の怪我で記憶が戻るとわ・・・
ホント、リョウにとって香は特別なんだな~

早く、全てはきだして楽になりなよね・・・リョウの素直な気持ちを、だれよりも一番喜んでくれるのは香なんだから・・・

さや | 2012年01月17日(火) 16:03 | URL | コメント編集

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