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2010.10.07(Thu)

都会の天使 第四話「逃れられない真実」

第四話「逃れられない真実」

『撩は・・・親父を殺したんだ・・・!』

電気も点けない暗く冷たい部屋に香は独り閉じこもり
何度も何度も頭の中をあの言葉が繰り返している。

どれだけ泣いただろう。
あの言葉を聞いてから、撩の顔も見ずにそのまま家に帰って
自室に入ってからもう時計は0時を過ぎている。
外はまだ土砂降りが続いていて、時折雷の音が聞こえてくる。

香は父親と撮った写真を手に取ると、また涙を流し思いに耽る。

父さん・・・

大好きだった父さんが死んじゃったとき、あたしは15だった。
死因は仕事中の事故としか聞かされてなかったけど・・・
でも・・でも・・・撩が殺したってどういうことなの?
ホントに撩が過ちを犯したっていうわけ?

アニキが言ったことを疑っちゃいけないけど・・あたしには、わかんない・・・

だって、あたし・・・撩のこと・・・・・・
撩のこと?

考えていたことを忘れるようにフルフルフルと首を振る。

父さんを・・・父さんを殺したかもわからない男(ひと)をあたしは・・・
わかんない・・わかんないよ・・・!

ドンっと自室のドアを勢いよく開けると、香はアパートを飛び出していった。
その音に気付いた秀幸は咄嗟に香を呼び止めようとしたが、香の耳には届かなく
独り残された秀幸は香の部屋に入り、そこに飾られた父親の写真を手に取り深く溜息をついた。


外はまだ雨が降り続き、その中をがむしゃらに走り続ける香。
どんなに涙を流しても大粒の雨がそれを流し去る。

そして雨はやがて小振りになり、香は濡れた身体を縮め込め道の端っこに体育座りをした。
二月の雨は冷たく寒い。震える身体を堪え顔を埋める。

――撩・・・もうこのままなのかな・・・


サラサラと霧状の雨が降っている中、コツコツとヒールの音を響かせて女性が通り過ぎていく。
コツン・・・と歩みを止め香を覗き込むように見つめる女性。

「あら、香さん・・なの?」

その声にビクンと香が反応し顔を上げ見てみると、そこにはずぶ濡れになっている香を
驚いた表情で覗き込む冴子の姿があった。

「冴子さん・・・」
「ど、どうしたの?そんなずぶ濡れになって!風邪引くわよ!」
「あ・・・その・・・」
「もう、いいわ!ほら立って!」

冴子は香の腕を掴むと無理矢理立たせ、ツカツカと足早に歩き出した。

「さ、冴子さん!?」
「いいの!そんな格好にさせておくわけにはいかないから!」

そう言ってしばらく歩いていると、喫茶キャッツの前に着いた。

「香さんちょっと待っててくれる?」
「あ、うん・・・」

カランカランカラン・・・

「あら、冴子さんもう閉店間近だけど、どうしたのかしら?」
「ごめんなさいね。遅くに。ちょっと頼みが」
「何かしら?」
「外で私の友人が待っているんだけど、急な雨で傘持ってなかったみたいで
ずぶ濡れになっちゃったのよ~。ちょっとお風呂と服を貸して貰えるかしら?」
「あらら、それは早くしないと風邪引いちゃうわ!入ってもらって!
すぐにお風呂の用意するからっ。お願いねファルコン!」
「おう、風呂すぐ入れてやる。待ってろ」
「美樹さんファルコンありがと~!恩に着る!」

その後、すぐに香を招き入れお風呂場へ連れて行った。
脱衣所で濡れた衣服を一枚一枚剥ぎ取り、バスルームにソッと入る。
身体と髪を一通り洗うと静かに湯船に漬かった。

暖かいお風呂は、いつもならホッとする空間なのに今はそれも無に感じる。
答えが見つからない思考を振り払うように、ブクブクと湯船に顔を沈める。

それから30分・・・ちょっと長いかな?と思った美樹と冴子が覗きに行くと
お風呂からすでに上がった香が服を着て脱衣所でうずくまっていた。

「香さん、どこか調子でも悪いの?」
「・・・・・・」

うずくまって無反応な香肩にそっと冴子が手を添えて「どうしたの?」と問い掛けると
香は小さく震えた声で冴子の名前を呼び振り返った。

「どうしたの?何かあったの?聞いてあげるから・・・」

その言葉に香は俯いた顔を上げ振り向くとポロポロと涙を落としながら冴子に抱き付いた。

「か、香さん・・・」




「じゃ、コーヒー置いておくわね。ごゆっくり」
「何から何までありがとう美樹さん」
「ううん、いいのよ♪」

閉店となった喫茶キャッツで、香は出されたコーヒーを手に取り静かに話し始めた。

「ええ?秀幸がそんなこと言ったの?」
「うん・・・それって本当なの?冴子さん」
「まさか、あなたたちがいつの間に知り合ってるのも驚いたけど
秀幸がまだ撩を恨んでるなんて・・」
「ねぇ?殺しただなんて・・・本当なの?」

涙を堪えながら話す香の背中に手をやり優しく撫でると「間違いよ」と言う。

「間違い?」
「ええ、そうよ。殺してはいないわ。
あれは仕方なかった・・・」
「どいうこと?」

「あれは・・・5年前の夏になるわ・・・」


当時私はあなたのお父さんと組んで仕事をしていたのは知っていたわよね。

猛暑が続く夏のある日、私とあなたのお父さんで聞き込み調査をしていたの。
車で移動中に銀行強盗が発生の無線が入り急遽向こう事に。
現場に着くと既に中では撩が犯人と睨み合いをしているところだったわ。

「撩が??撩は探偵でしょ?」
「ううん・・・今はそうだけど・・・5年前まで刑事だったの」
「!?」

刑事時代の撩1

そう、撩も刑事だったのよ。

睨み合いをしていた撩は、すぐにでも犯人を撃ち殺したかったはず。
凄い殺気が漂っていたからね。
けど、それは出来なかったので。犯人は人質に小さな女の子を抱っこしていたから。
知らない男に抱きかかえられたその女の子は怯えていて、涙をボロボロ流していたのを思い出すわ。
たぶんその女の子を早く助け出したかったのでしょうね撩は。でもそれが適わないから途方に暮れていた。
そこに、私達が来たのが分かった撩は携帯で「犯人が要求している逃亡用の車を用意してくれ」
と連絡が入り、用意した車に犯人が女の子を連れて乗り込もうとしたときに女の子を引っ張り出して
犯人から引き離すって作戦を考えていたわ。
予定通り逃亡用の車が到着し、犯人が女の子を連れ車に乗り込もうとしたとき、撩が銃を片手に動き出し
あなたのお父さんが女の子を引き離そうと手を伸ばすと、犯人がお父さんに手を伸ばし
首を腕で絞める形で動きを止められてしまった。
幸い、女の子はその場から逃れ助かったのだけど・・・
苦しくもがく相棒に私は何も出来ず、撩は銃を構えたまま固まっていた。

「りょ、撩!!撃て!このまま撃ってくれ!!」

声を押し出すように叫んだ言葉に撩は、眉間にシワを寄せ目を見開き動揺していた。
けど、このままでは窒息するのは時間の問題だった。
犯人の頭をぶち抜けるんだったら、すぐしていたわ。けど防弾ヘルメットを着用していて
それが適わない。それはたぶん潜入してきた警官のを奪ったのだろう。
だけど、上着には防弾チョッキなど着用しておらず、そこを狙えと言うことだんでしょうね。
それはわかっているけど、犯人を仕留めると同時にお父さんも打ち抜いてしまうことに
変わりはない。
そんなに長い時間ではなかったけど、撩にとってはものすごい長く悩んだと思う。

「それで・・・この先は言わないでもわかるわよね・・?」
「う、うん・・・銀行強盗の話は知ってたけど、どういう状況でってのは初めて知った」
「・・死因が撩に関係していたのは事実。でもあの状況ではどうすることも・・・」
「・・・・・・・・・」
「それでも撩を人殺しだと恨む?」
「・・・あたしは・・そんなことを目の前にしたら冷静でいたかわかんない。
どんなに苦しかったかわかんない」
「秀幸も分かっているはず。撩が苦しみの末選んだことだって事」
「・・・あ、あたし・・アニキの所に戻るね!」
「うん、そうしてあげて。たぶんあの人大慌てで探してるんじゃないのかしら」
「・・・そうかもね」

冴子のポケットに入った携帯はずっと着信を知らせ震えていた。

「ありがと、冴子さん」

香はそう言うとキャッツのドアを勢いよく開けると、外はもうすっかり雨が上がっていた。
これ幸いにと駆け足で自宅アパートへ走っていった。

「もしもし?」
「冴子!やっと出たか!そっちに妹は来てないか!?」
「ええ、来てたわよ」
「出してくれ!」
「もう帰ったわ」
「なんだと?」
「それじゃ、私忙しいから切るわね」
「お、おい・・・ツーツーツー」

香さんに全てを話したこと伝えた方がよかったかもしれないけど
でも、香さん自身が秀幸に伝えてこそだと思うから私はもう口を出さないわ。
これを機に色々と解決になればいいけどね・・・

「・・・あら?」

ふと携帯の画面に目をやると不在着信がもう一件あることに気付く。

「撩からじゃないの・・・仕事以外では連絡なんて無いはずなのに・・」

プルルル・・・プルルル・・・

「もう、出ないじゃないの。折角掛けてやったのにっ」



シトシトと小振りだった雨も止み、息を荒くして自宅アパートに着いた香。
ドンっとアパートのドアを開けると、ダイニングテーブルにエプロンをしたままの秀幸が
座ったまま寝ていた。
「アニキ!」と声を掛けると、ビクッとした秀幸がむくりと起き出した。

「香・・・帰ってきたか・・」
「アニキ・・・あのさ」
「・・・アイツは絶対お前を傷つける。父さんの時のように」
「・・アニキ!そ、そんなの!」
「なんだ!」
「そんなの、真実から目を背いてるだけじゃないの!!」
「な!あれは絶対アイツが悪い!もっと良い方法があった筈だ!」
「・・・撩は悪くない!悪くなんかない!!」
「香!!」
「アニキのバカーー!!」


香は再びアパートから飛び出すと、泣きながら走り続けた。





◇あとがき◇
何回香を泣かせるのー!アニキ!w
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テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学

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