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2010.10.14(Thu)

都会の天使 第五話「決意と新たな歩み」


第五話「決意と新たな歩み」


「親父を殺した」

その言葉は間違ってはいない。
俺は確かにあの時、親父さんをこの手で撃ち抜いた。
何度も周りに仕方がなかったと言われた。何度も俺自身そう言い聞かせてきた。
だが、俺には忘れることの出来ない出来事。
他にももっと良い方法があったのかもしれないのに、あの時の俺は余裕がなかった。
5年前の俺は本当に未熟だった。

あの事件の後、親父さんの葬儀に出席はしなかった。
冴子伝いで槇ちゃんに「出るな」と言われたから。

葬儀の日、俺は遠目から親父さんの冥福を祈った。
その時、香を初めて見たんだったな。遠くからだったが涙を流さず凛としていたのが印象的だった。
けどそれが返って痛々しく俺の心は苦しかった。
そんな香を遠目に見つめながら親父さんの最後の言葉が浮かんだのを思い出す。

「香を・・一人娘を頼む・・・・」

親父さんとは、仕事以外にもプライベートで飲み歩く仲間だった。
飲み出すといつも話しに出てくるのは、香のことばかり。
それ程に親父さんにとって娘は大切な存在だったんだろう。
それを俺は引き裂いてしまった・・・
その苦痛に耐えきれず俺は刑事を辞め、単身アメリカへ渡った。
向こうで4年間色々と学んだんだ。


そして日本へ帰国し今の俺が居る。

まさか、冴子と組んで大怪我覆ったあの事件をキッカケに、また槇村兄妹に会うとは
思わなかった。あの時の事を思い出させることも、俺自身が思い出すことも
拒んで生きてきていたからな・・・
だが、逃げていても仕方ない・・・・今の俺は前へ進まなければいけない。
親父さんの言葉を忘れないためにも、な。

今までのことを思い出し浸っていると、玄関のドアを叩く音が聞こえた。

トントントントン・・・

「誰だ?」
「・・りょ・・ぅ・・・」
「香か?」
「うん・・・」

覗き窓でその顔を確認すると、チェーンを外し中へ入れてやった。
中へ入ってきた香の顔は泣いていたようで、まぶたが腫れぼったくなっている。

「りょ・・・あたし・・・」

何かを言おうとした香をソッと抱き寄せ背中を優しくさすり「何も言うな」と囁いた。
撩が抱きしめたまま長い沈黙が続き、香の息遣いも落ち着いた物になってきた。
それを見計らって撩は抱きしめていた腕を放し、香をソファーへ座らせ暖かいコーヒーを出した。

「・・ごめんね撩」
「なにがだ?」
「デート付き合ってくれたのに、こんな事になっちゃって・・・」
「・・・・おまぁさ。もう知っているんだろ?俺が何をしたかって」
「・・・うん」
「ろくでもない男だっただろう」
「ううん!そんなことない!」

撩は香の隣に座り、香の頭を自分の胸に抱き寄せると「ろくでもねーよ」と呟いた。

「お前達の大切な親父さんを俺は殺しちまったんだ」
「殺しただなんて・・・あたしは・・あたしは撩を恨んだりしないよ」
「無理なんてしねーでいいんだぜ。俺を殴りたきゃ殴ったっていい」
「無理なんてしてない!あたしは・・あたしは・・・・!」

涙で潤ませた瞳で撩を上目遣いで見つめ、言おうとした言葉を詰まらせる。

「・・すまんな。俺がしたことでお前を苦しめて・・・
こんなんじゃあ、親父さんに呪われちまうな~」
「・・初めて聞かされたとき苦しかったけど、でも撩とまた会って話したら
憎しみなんて無いってわかった。もうそれでいい」
「香・・・」

またギュッと頭を抱き寄せられ沈黙の中、互いの鼓動だけが鳴り響いていた。


       ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


カチカチカチ・・・と時計の音が鳴く部屋の中で独り悩み続ける秀幸。
未だに撩のしたことを許せないで居る自分。
その撩が大事な妹と一緒にいたこと。
それを考えるとイライラが止まらない。

あの男が全て悪いんだと今まで思いこんできた・・が、妹にとって撩の存在は
いつの間にか俺の知らないところで大きなものになっているようだった。
今までの香は兄の俺に対してあそこまで本気で怒ったことなんて無かった。
あの男はそんなに大事な存在なのか?あんな軽い男・・・

そういえば、生前父さんが言っていたのを思い出す。

「撩って男は、普段はああだがそれはフェイクでしかない」

おちゃらけてる普段の奴は、嘘の仮面ってことなのか?
アイツはアイツなりにもっと辛い過去があったのかもしれない。
それを父さんは知っていて、だから息子のように可愛がっていたとしたら・・・

そうだった・・父さんと撩はよく飲みに行っていた。
撩は酒に強かったが、父さんは弱くてよく俺が迎えに行ったことがあったな。
そん時よく嬉しそうに撩のことを話してたのを思い出すよ。

ずっと恨んできたあの男の事を俺は、何一つわかろうとしてなかったのかもしれんな・・・
父さんはあの時何を思ってあの男に何を言ったのか・・・
これを機に俺も変わらないといけないのかもしれないな。
じゃないと、死んだ父さんも浮かばれないか・・・

香・・・次帰ってきたときは、真実から目を背けないで真正面から受け止めるから。
今度こそ泣かせずにしないと・・・

冷静さを取り戻し、一つの答えへ辿り着いた秀幸は新たな一歩を歩もうと決心した。

「それにしても、なんで妹が撩と一緒にいたんだ?それが一番気がかりなんだが・・・」



「へっくしょぃ!!」
「だ、大丈夫?」
「じゅるじゅる・・・だーれか俺の噂でもしてんじゃねーの?」
「あはは・・・かもしれないね」

二人ソファーに掛け、寄り添って点けっぱなしのテレビを見ながら他愛のない話しをしていた。
互いの携帯が鳴っていても出ることなく、今はこの時を楽しんでいたい。
ふと見た時計は0時を指そうとしている。
撩は咥え煙草をしながらトーク番組を見てケタケタ笑う。

今日一日あまりにも色々ありすぎて疲れ切っていた香は、もう意識が途切れ途切れで
限界だったのか撩の肩にもたれ掛かり「りょ・・・」と呟くとそのまま夢の世界に沈んでいった。

Zzz・・・



「・・・香」

おもむろに携帯を取り出した撩は、冴子に電話を掛け香の事を話し「迎えに来てくれ」と頼んだ。
それからしばらくして、冴子が車で乗り付けアパートまでやってきた。
その音を察知した撩は香を抱きかかえ外へと出ると、車で待っている冴子に近づき小声で話しかけた。

「よっ、冴子。すまんな遅くに呼び出して」
「いいわ。早く香さん乗せて行くわよ」
「俺はいかねーよ」
「いいから!あなたも行くのよ!」
「な、なんだよ」

冴子に言われるがまま撩も車に乗り込み、秀幸が待っているアパートへ向かうことになった。

「俺が行ったらややこしくなんねーか?」
「そんなことないわ。今行かないと、絶対後悔するわよ撩」
「んだよ、それ」

香が撩の肩にもたれ掛かり寝息を静かに立てている。
時折、微かに撩の名を呼んでいるように聞こえる。
その度に、起きてしまったか?と覗き込むが気持ちよさそうに寝ている。

「それにしても、あなた達いつの間に仲良くなってたのね」
「ん、まぁな」
「香さん、あなたには勿体ないくらい良い子ですものね」
「ふん、バーカ」


撩、本当にかわったわ。
刑事時代初めてあったときは、時折見せる目が死んだように冷たくて何を考えてるか
わからない人だったけど・・・

今は、香さんを目の前にしてる撩の時折見せる表情はとても穏やかで暖かい。
まるで撩が天使に浄化されたみたいに、あの頃の表情を見せなくなった。
ちょっと悔しいけど、撩には香さんが必要なのかもしれないわね。

冴子はバックミラーで二人の様子を伺いながら一つ溜息をついた。


「さぁ、着いたわよ」

冴子の一言で我に返る・・・いつの間にか眠っていたようだ。
香はというと、まだグッスリ眠っている。

「よくまー寝てるなコイツ」

そう言うと、また抱きかかえる。
冴子が先にアパートに行きドアをノックすると、ドアを少し開け秀幸が「香か?」と呟く。

「あら、香さんじゃなくてごめんなさいね秀幸」
「冴子か・・・」

少し残念そうな顔をした秀幸に冴子は、呆れた顔をして自分の
乗ってきた車の方を指さした。

「ん?そこにいるのは、撩なのか?」
「ええ、そうよ。香さんもいるわ」

暗闇の中、見づらかったのか撩が香を抱きかかえているのが見えていないようだ。

「香さん・・・また私の所に来てたんだけど、疲れちゃったのか眠ってしまって
一人じゃ運べないから撩に頼んだのよ」
「そうか、世話掛けたな撩」
「いや、いいんだ・・・」

そう言うと撩は香を秀幸に託し、車の方へ引き返していった。

「じゃ、俺は帰るぜ。冴子送ってくれ」
「ええ、わかったわ」
「ちょ・・・ちょっと待ってくれないか」
「ん?」

車に乗り込もうとしていた撩を秀幸が引き留める。

「ちょっと話さないか・・・」
「・・・ああ、いいぜ」

秀幸は撩と冴子を部屋へ招き入れ、キッチンからおもむろにビールを出すと
それを撩と冴子に渡した。

「飲みながら色々聞かせてもらうぞ撩」
「おう」

それから撩と秀幸はどんどんビールを飲みながら今まであった事を話した。
秀幸は、香の小さいときの話しや父親の話。
撩の方は、冴子が間に入り刑事時代の話しをした。
冴子と撩の初仕事なんかは、初っぱなから冴子にちょっかい出して
親父に怒られたなんていう思い出話を面白可笑しく語った。

互いの思い出話を語り合って。今までのわだかまりが取り除かれていった。
そして、いつの間にか二人は酔いつぶれ仲良くリビングでいびきをかき眠っている。
そんな二人を冴子は呆れかえりながらも「良かったわ」と呟きアパートからそっと姿を消した。

明け方頃、やっと起きてきた香は兄と撩が肩を組んで寝ている姿を目にすると
驚きと喜びいっぱいで勢いよく二人の中へ飛び込んでいった。


「良かった。アニキ、撩大好き!」


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テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学

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